弁護士のプロボノ活動について

1 はじめに

企業の社会的責任、いわゆるCSR(corporate social responsibility)という概念は一般的に普及して久しく、多くの企業が多種多様な活動を行っています。同様に弁護士の業界にも「プロボノ」と呼ばれる活動があります。今回のさくら便りでは、当事務所のプロボノ活動について紹介をします。


2 プロボノとは

プロボノは、ラテン語で「公共善のために」を意味する「pro bono publico」の略語です。専門的知識を有する者がその職能をいかして行う公益事業を意味しますが、特に弁護士の業界において広く行われてきました。アメリカの弁護士を題材にしたドラマや映画では、プロボノ活動の一環として、大手弁護士事務所の若手アソシエイトが貧困者等の依頼を受けているシーンが度々描かれています。


日本の弁護士は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」(弁護士法1条第1項)職業ですから、その職責からもプロボノ活動は当然の義務といえます。実際、弁護士会を通じて公益活動が義務化もされています。私の所属する第二東京弁護士会でも「公益活動等」が義務づけられており(第二東京弁護士会会則22条の2)、国選弁護人や当番弁護士、弁護士会の委員会活動等を行わなければならないこととされています。
なお、この公益活動等を行っていないと一定の金銭負担もしなければなりません(第二東京弁護士会だと5万円です。)。
ただし、今回紹介する当事務所のプロボノ活動は、弁護士会から義務づけられたものとは別の活動で、当事務所独自のものになります。


3 当事務所のプロボノ活動(フィリピン日系人への法的支援)

当事務所では、NPO法人フィリピン日系人リーガルサポートセンターと提携し、フィリピン日系人の就籍活動を行っています。
フィリピン日系人は、明治以降に国家の要請で実施された移民施策の中で、フィリピンに移民した日本人(1世)とその子孫を指します。日本の国籍法上 、日本人男性と現地で結婚したフィリピン人女性との間で生まれた子供(2世)は日本人とされていました。しかし、第二次世界大戦が勃発し、日本の敗戦後、1世の多くは日本へ強制送還されましたが、2世はフィリピン残留孤児としてフィリピンに取り残され、そして、そのまま現代までこの問題は放置されてきました。
この問題に対し、当事務所では河合弘之弁護士、青木秀茂弁護士を中心に、平成15年から、就籍 という方法で、フィリピン日系人の2世らに対して、日本国籍を取得させるという活動を行ってきました。この活動でこれまでに2世ら200人以上が日本国籍を有することが家庭裁判所で認められてきました。


平成29年11月3日に、就籍200人を記念するフィリピン日系人連合会総会があり、私も出席をしましたが、日本人であることを認められた日系人2世の方や、その子(3世)、孫(4世)も大勢集まり、現地だけではなく日本のマスコミも取材に来ていました。戦後70年以上経っても残された問題の1つであり、国単位での早急な解決が望まれるところです。


4 終わりに

当事務所は訴訟、企業法務、倒産事件など多種多様な業務を取り扱っていますが、その一方で、社会正義の実現のためプロボノ活動も実施しています。当事務所の「ビジネス」以外の面についても少しでも伝えられたなら幸いです。




2017年(平成29年)11月13日
さくら共同法律事務所
弁護士 日野 慎司