さくら共同法律事務所

ロシア版シリコンバレー

ロシアに対する印象としては、どのような国なのかよく分からない、若しくはあまり良い印象を持っていないという方が多いのではないでしょうか。
私もこれまでロシアに関する知識や情報をほとんど持っていませんでしたが、最近、日本在住のロシア人(5カ国語を操るとても優秀で魅力的な方です)と知り合いになり、いろいろとロシアのことを教えてもらっています。
今回は、その方から教えてもらったロシア版シリコンバレーと呼ばれている特区について紹介させていただきます。


その特区の正式名称はスコルコヴォ(Skolkovo)といい、モスクワの中心地から南西に約20Kmほどの位置にあります。2010年に、当時のメドベージェフ大統領が、天然資源に依存した経済構造から脱却する目的からの一大プロジェクトであり(敷地は400ヘクタールと広大で、敷地内にはテクノパーク、ビジネスセンター、大学等が併設されたイノベーションセンター)、ロシアは、この特区を国をあげて推進しています。
スコルコヴォ法という法律も制定されており、①エネルギー、②原子力、③情報技術、④宇宙、⑤医療の5つの事業目的が掲げられています。
運営主体は、ロシア政府そのものではなく、スコルコヴォ法に基づき設立されたスコルコヴォ財団であり、役員(理事)には、ノキア、シーメンス、グーグル等、世界の名だたる企業のCEOらが名を連ねています。
日本企業にとって、スコルコヴォの最大の魅力は、参加企業として認められれば、様々な手厚い支援が受けられるという点にあります。
支援の内容は、大きく、優遇措置、専門家支援機能、助成金の3つに分けられます。


まず、優遇措置として、法人税や固定資産税等の税金が免除され、雇用者の年金などの社会保険料の減額等の措置が受けられます。
次に、専門家支援機能ですが、経営サポートが受けられることはもちろん、知的財産登録や通関業務の代行等のサービスを受けることが可能です。
最後に、助成金ですが、返還義務のない資金が提供されるというものであり(助成金の額は、審査結果によって違いがありますが、相当な金額となります)、資金が潤沢でない中小企業にとっては、3つの支援の中でも目玉の支援とも評価できます。


参加企業として認められるためには、前記のスコルコヴォが掲げる5つの事業目的のうち少なくとも1つを目的とするものであることに加え、事業目的に関する審査をパスすることが必要となりますが、審査のハードルはそれほど高いものではないようです(ただ、定期的なレポートの提出が義務づけられており、その作成がそれなりの作業になるとのことです)。


日本においては、ビジネス分野でのロシアに対する関心はまだまだ低いといわざるを得ません。その原因は、ロシアに対する悪いイメージ(怖い、まともなビジネスが出来ない等)が影響していると思われますが、実際には、ロシアは普通の新興国であり、ビジネスをする上で特段の支障はないようです(悪いイメージは誤解に基づく部分が大半と思われます)。
ロシアは、BRICSの中では、1人あたりのGDPが最も高い国であり、ロシアビジネスには魅力があります。ロシアへの進出を検討されている企業には、まずは、スコルコヴォへの参加企業となることについて検討されることをお勧めいたします。


2016年(平成28年)4月7日
さくら共同法律事務所
弁護士 泊 昌之