さくら共同法律事務所

社外取締役の仕事

私は5年ほど前から、とある地方都市の会社の社外取締役に就任し、月に最低一度の取締役会に出席し、取締役会の議題となる事項について意見を述べたり、必要な決議に参加したりしています。その他、(最近はお休みがちですが)会社業務に関係する法令等についてのコンプライアンス講習を行ったり、業務遂行上、検討が必要となる法律問題について個別に相談を受けることもあります。


取締役就任当初は、会社の経営状況が今よりも不安定であったことなどもあり、取締役間で意見が対立したり、株主から会社経営に対する不満が出されたりすることへの対応など、決して気楽な仕事とはいえず、本音を言えば、どうして取締役就任を受けてしまったのだろうかと後悔することも少なくありませんでした。


それでも、会社の経営を良くしたいという強い思いを持つ役員や従業員、株主と協力しながら経営改善を重ねた結果、今では安定した経営基盤と、法令遵守の精神とより良い成長を目指す経営陣と従業員が一致団結して日々の業務に励む、とても素晴らしい会社になりつつあります。


こうした社外取締役としての仕事は、たとえばトラブルが起きたときだけ相談を受けるような、通常の弁護士業務とは異なり、取締役会への出席という限られた範囲ではありますが、会社の業務状況についての報告を受け、必要な決議事項に参加することで、会社の経営に参画し、共に歩むという楽しさ、充実感があります。


また、手前勝手ではありますが、会社としても、弁護士が社外取締役として会社経営に目を光らせていることで、法令を軽視、無視したいい加減な業務はできないぞという心構えと、取締役会で報告し、承認された業務遂行について、自信と安心感を持って取り組むことができるというメリットがあるのではないでしょうか。


現在、上場会社等の大会社では社外取締役の選任が実質的に義務付けられていますが、日本の企業の多くを占める中小企業では社外取締役、あるいは社外監査役の選任は必要とはされておらず、実際に社外役員に弁護士を選任している会社は少ないと思います。もちろん費用との兼ね合いもあるでしょうが、私としては、上記したような理由から、弁護士を社外取締役、あるいは社外監査役として選任し、取締役会への出席を通じて会社の経営状況を法律の専門家に知っておいてもらうことは、とても意義のあることなのではないかと思います。


そして、我々弁護士の立場からも、企業の内部から会社の経営に関与できるという意味で社外取締役という仕事はとても魅力的であり、またやりがいのある仕事と言えます。 そんなわけで、今月も地方出張が楽しみです。



2017年(平成29年)2月15日
さくら共同法律事務所
弁護士 髙野 裕之