さくら共同法律事務所

紛議調停制度について


1.紛議調停制度とは

弁護士が依頼者から法律業務の委任を受け、職務を遂行するうえでは、依頼者との信頼関係が不可欠であります。しかし、残念ながら弁護士と依頼者との間には様々な原因に基づき紛争が生じてしまうことがあり、そのような場合に、調停委員が弁護士と依頼者等との間に立って、紛争の実情に応じた円満な解決を図ることを目的とするのが紛議調停制度です。


弁護士法は、「会員の職務に関する紛議の調停に関する規定」を各弁護士会の会則で定めることは要求し(弁護士法33条2項12号)、弁護士会が弁護士の職務に関する紛議につき請求により調停をすることを定めています(弁護士法41条)。このように、紛議調停制度は、弁護士会の有する自治権の一環として、懲戒制度などとともに必要的制度として位置づけられています。


2.紛議調停手続

紛議調停手続は、弁護士または依頼者等の申立により開始し、申立費用は原則として無償です。
申立後の進行は、通常の民事調停手続と変わるところはなく、申立書の内容や答弁書を確認のうえ期日を指定し、当事者の呼出を行い、双方から提出された主張書面や証拠を基に協議を行います(審理は非公開)。当事者が納得して合意が成立すれば「調停成立」となりますし、合意成立の見込みがない場合には「調停不成立」として終了となります。裁判と違って、当事者の事実認識や見解に大きな隔たりがある場合に、判決のような形で調停委員の見解を明らかにすることはありません。


3.調停現場の昨今の感覚

私は、平成24年から約5年半にわたり所属弁護士会の紛議調停委員を務めているのですが、依頼者の方において、最近は申立前に他の弁護士からセカンドオピニオンをとって、「他の弁護士からはとんでもないやり方(職務怠慢)だと聞いている」「この報酬は高すぎると聞いた」と主張されるケースも増えています。


また、残念ながら、審理の初めから「懲戒申立も検討している」「調停委員(弁護士)もどうせ弁護士の味方なんでしょう?」と攻撃的な姿勢を見せる方も見られます。


しかし、調停委員においては、審理の場に現れた主張や証拠に基づいて、合意内容や業務遂行上の成果を当事者が受け入れ可能と思われる調停案を提示しますので、こうしたセカンドオピニオン等に影響を受けるということは通常ありません。


一方、弁護士の側も未だに委任契約書を作成しないで職務を遂行したり、依頼者からの問い合わせに対し全く連絡をせず、不信感を増幅させている場合もあります。このような振る舞いは速やかに改められるべきでありますし、自分も同じ弁護士として襟を正していかなければならないと改めて感じます。


紛議調停の新受件数(全国計)は平成18年には512件だったものが、平成27年には650件と緩やかな増加を示しています(弁護士白書2016年版より)。この期間の弁護士数が2万3096名から3万7445名に大幅に増加したことに比較すれば、申立件数の伸び率は大きくありませんが、紛議調停の申立件数は今後とも緩やかな増加傾向を示すものと予想されます。
元々は信頼関係にあった弁護士と依頼者とが、不信に陥り、紛争に至ってしまうのは大変残念なことです。しかし、そのような状況に至ってしまった場合でも、紛議調停手続の利用により、少しでも円満な解決に至ることができるよう今後とも調停業務を遂行してまいりたいと思います。




2017年(平成29年)12月11日
さくら共同法律事務所
パートナー弁護士 上田 直樹