さくら共同法律事務所

自転車事故


1 32.3%?

 日本では春と秋の年2回,それぞれ10日間に亘り,全国交通安全運動期間が設けられています。近年,交通事故の数や自転車事故の数自体は減少しているようですが,交通事故全体に占める自転車関与事故の割合は,全国平均は18.4パーセントであるのに対し,東京都内では32.3パーセントと高い割合を占めているようです。(警視庁ホームページ)。私は,交通事故のご相談をお受けすることがしばしばあり,その中で,以前はさほど多くはなかった自転車事故のご相談,特に,自転車が加害者となった事故のご相談が多くなったと感じることがあります。そこで,自転車事故,特に自転車が加害者となる事故における留意点について述べさせていただきます。


2 自転車事故の特徴

 自転車事故には,以下のような自動車事故にはない特徴があります。

 まず,自転車事故の場合,自賠責保険のような加入が義務づけられた保険がありません。したがいまして,自動車事故の場合,任意保険に加入していなかったとしても,自賠責保険から傷害の場合で120万円,後遺障害が残存する場合で3000万円まで保険金が支払われますが,自転車事故の場合,このような義務づけられた最低限の保障すらありません。自転車事故の場合,自動車ほどの速度はでませんが,体が外に出ているため怪我が深刻になりがちで損害賠償額が高額化するものも多くありますので,自転車事故を対象とする保険への加入は有効です。

 次に,自動車事故の場合にはほとんどの方が任意保険に加入しますが,自転車事故を対象とする保険(個人賠償保険)への加入割合は高くありません。そのため,自動車事故においては,通常,任意保険会社が医療機関に対して治療費を立替えて支払ってくれるのですが,加害者が自転車の事故を対象とする保険に加入していない場合にはそのようなことはなく,治療費についても一旦は被害者の方が支払い,その分を加害者に請求するということになり,被害者の方への負担が大きくなってしまいます。この点に配慮し,加害者(加害者が個人賠償保険に加入している場合にはその保険会社)が予め被害者に対して当面必要となる治療費を渡しているケースも見受けられるところです。

 さらに,自転車事故の場合,労災事故を除き,仮に後遺障害が残ってしまったとしても,後遺障害の有無及びその内容を判断してくれる機関はありません。自動車事故の場合には,損害保険料算出機構という団体が後遺障害の有無及びその内容を判断してくれます(その判断が被害者に冷たくなりがちという問題点はあります)が,自転車事故の場合,そのような機関がなく,被害者と加害者の合意または裁判によって後遺障害の有無及び内容を決定することになります。


3 個人賠償保険の有効性

 以上のような点は,自転車事故の被害者のみならず加害者にも大きな負担になるものです。自転車事故で自らが怪我を負ってしまった場合には自らが加入している傷害保険にて対応できることも多いと思いますが,相手に怪我を負わせてしまった場合の損害賠償責任を保険会社に支払ってもらうためには個人賠償保険への加入が必要となります。自らは自転車に乗らない場合でも,子どもが自転車に乗って自転車事故を起こした場合には損害賠償義務を負いかねませんので,そのような場合に備え,自転車事故にも適用される個人賠償保険に加入することは有益です(個人賠償保険は,自らが他人に対して損害賠償義務を負担する場合を対象としますので,自転車事故だけではなく,例えば,住宅の水漏れ事故などの場合にも対象となります。保険の契約者だけでなく,同居の親族が事故を起こした場合にも対象になります。)。

 最近では,主に関西圏においてですが,条例をもって自転車事故を対象とする保険への加入を義務づける自治体も出てきております。


4 すでに個人賠償保険に加入しているかも?

 自転車事故を対象とする保険(個人賠償保険)というと,以前は単体で販売されることは多くなく,火災保険等の保険料率の比較的高い保険に付加されている場合や自動車保険に付加されている場合の方が多い印象でした(分譲マンションにお住まいの場合には管理組合が加入する共有部分の保険に個人賠償保険が含まれていることもありますし,賃貸住宅にお住まいの場合には加入を義務づけられる火災保険に個人賠償保険が付加されていることがほとんどです。)。また,クレジットカードのサービスとして個人賠償保険が付加されている場合も多くあります。

 ただ,これらの場合,限度額はあまり高くないことも多く,損害額が高額になる場合には保険金額が不十分となる可能性もあります。


5 個人賠償保険はコンビニでも入れます

 最近では,コンビニ(セブンイレブン,ローソン,ファミリーマート)にて加入できる保険や,携帯電話事業者などが販売する保険があり,しかも保険料は少額(月額300円程度)となっております。少額の保険料であっても,限度額が1億円以上のものも多くありますので,大きな負担なく大きな損害までカバーできるものとなっております。


6 まとめ

 自転車事故への備えとしては,そもそも事故を起こさないように気をつけることはもちろんですが,現在ご自身が加入されている可能性のある個人賠償保険を確認のうえ,不足があれば加入を検討することをお勧めできるように思います。


以上


2016年(平成28年)10月11日
さくら共同法律事務所
弁護士 平山大樹