弁護士の子育て事情


1.はじめに

年度の変わり目が近付き、各自治体では認可保育園の入園可否の通知が来る季節となりました。個人的な話で恐縮ですが、私にも現在保育園に通っている小さな子供が2人おります。弁護士になり、当事務所に入所した当初は、弁護士の仕事は忙しいし、自分には結婚出産は縁遠いと思っていた時期もありましたが、そんな私も今や立派な「ママ弁護士」として毎日保育園に子らを送り迎えするようになってしまいました。本稿では、あまり知られることのないであろうママ弁護士の実態について、少しご紹介をしたいと思います。


2.ママ弁護士の朝

弁護士に限らずだと思いますが、働く母にとって朝は戦争です。私の場合は、子供たちが2人ともまだ自分で着替えもできないくらい小さいので、朝起きたら2人分のオムツを替え、着替えをし、下の子には授乳をし、洗濯機を回し、朝ご飯の用意をして、子供たちに朝食を食べさせます。2人ともまだ自分一人では食事ができないので、さながら阿修羅像のように両手を早業で動かして2つの小さな口に次々に食べ物を運びつつ、自分も食事をします。上の子は最近イヤイヤ期なるものにかかってきたのか、気分が乗らないと、「やだもーん」などと言ってごはんを食べてくれません。焦る気持ちを抑えて、なだめすかして食事を終えます。
その後、2人ともおそらくはありがたいことにお通じが大変よいので、漏れなく2人分のオムツを替え、洗濯物を干し、下の子に再度授乳をして、2人分の外出準備をして、家を出ます。
子らを2人乗りベビーカーに乗せ、雨の日も風の日も、猛暑の日も、徒歩30分の道のりを保育園に急ぎます。昨年の猛暑の折には、何かの修行なのかと毎日心を無にして足を進める日々でした。


3.ママ弁護士の仕事

保育園に預けてから出勤をします。電車の中でメールチェックなどをして、一日のタスクを把握します。保育園のお迎えまでの時間が限られているので、一日にやることを決め、効率的に仕事をしなければなりません。出産する前までは、夜や土日も仕事をすることができましたが、子供がいると時間を全部自分の仕事のために使うということが難しくなります。働き方改革といいますが、ママ弁護士の場合は選択肢の余地なしに、必然的に働き方を見直さざるを得ません。


4.ママ弁護士の妊娠、出産

私も含め、多くの弁護士は個人事業主という形態をとるので、労働基準法や育児介護休業法に基づく法律上の産休、育休というのは実は対象外となります。もっとも、私は事務所の理解をいただき、必要な期間のお休みをいただくことができました。事務所の中には、女性弁護士が妊娠をすると、辞めるよう働き掛けたり、妊娠前と同じ働き方を強いたりして事実上働き続けられないようにするところもあると聞きますが、その点では私は理解をいただけて大変恵まれていると思います。
ただ、女性弁護士、またそれに限らずフリーランスや自営業の女性は、法律上の産休・育休の対象とならないことが多いので、金銭的な事情や仕事の代替がきかないという事情から、出産しても産後1ヵ月とか、せいぜい2ヵ月くらいで仕事に復帰する人も多いとも聞きます(私自身も子供がいずれもゼロ歳のときに復職しました)。もっと、自営業やフリーランスの女性が妊娠・出産・育児をするについて、法的にも金銭的にも保護される仕組みがあればよいのにと私は個人的に強く思っており、現在、所属する東京弁護士会の男女共同参画推進本部に参加させていただき、そうした仕組み作りにも取り組んでいるところです。


5.おわりに

仕事と家庭の両立といいますが、家庭、すなわち育児や家事も一つの重要な仕事なので、そういう意味では出産をする前よりも確実に仕事をしているのではないかと思います。夜中も下の子が何度も起きるので、この1年以上3時間以上まとめて寝たことがありませんし・・・。弁護士業に割く時間は出産前よりは限られてしまうようになりましたが、事務処理能力はむしろ上がったのではないかと思いますし、一日の密度は格段に濃いです。
自分の時間はあまりありませんが、それでもやはりぷくぷくの子供たちと触れ合う時間は何者にも替えがたいです。仕事でストレスを感じても、子供たちに癒やされることも多いです。昼間ママがいなくて、お迎えもいつも遅くて、さみしくないのかな・・・と心をよぎったりもしますが、その分仕事をがんばらなくてはというモチベーションにつなげていきたいところです。
最後に、私が危なっかしくありつつも、働き続けられているのは、夫(弁護士)をはじめ周りの人たちの理解とサポートがあるからであり、感謝の気持ちをこの場を借りて申し上げます。



2019年(平成31年)2月12日
さくら共同法律事務所
弁護士 木村佐知子