最近の法改正の調べ方

既に20年以上前から継続している傾向と思われるが、近年、法改正は非常に活発な状況が続いている。例えば、ここ3年間(平成28年から平成30年まで)の主要な分野の法改正を思い付くままに挙げてみると、下記のようになる。


【民法分野】

・平成28年改正(再婚禁止期間の改正)
・平成29年改正(いわゆる『債権法改正』)
・平成30年改正①(成年年齢の引下げ、女性の婚姻開始年齢の引上げ)
・平成30年改正②(相続法改正――配偶者居住権の新設、特別の寄与の制度の新設、遺産分割、遺言、遺留分などの改正)
・遺言書保管法の制定(法務局で自筆証書遺言を保管する制度の新設)


【商法分野】

・平成30年商法改正(運送・海商分野の改正)
・平成29年金融商品取引法改正(フェア・ディスクロージャー・ルールの導入、高頻度取引に対する規制等)


【民事訴訟法分野】

・平成30年人事訴訟法・家事事件手続法等改正(人事訴訟事件等についての国際裁判管轄の整備)


【刑法分野】

・平成29年刑法改正(強姦罪を強制性交等の罪にし、性犯罪を非親告罪化する等)


【刑事訴訟法分野】

・平成28年刑事訴訟法改正(取調べの録音・録画制度の導入、合意制度及び刑事免責制度の導入(いわゆる「日本版司法取引」)等)


【知的財産法分野】

・平成28年特許法、著作権法、商標法改正(「TPP協定整備法」による改正。著作権の存続期間を50年から70年に延長する等)
・平成30年著作権法改正(新たな権利制限規定の導入等(思想又は感情の享受を目的としない利用、電子計算機における付随利用等))
・平成30年不正競争防止法改正(限定提供データの不正取得等を「不正競争行為」に追加等)


【経済法分野】

・平成28年独禁法改正(「TPP協定整備法」による改正。確約制度の導入)
※ 法律の改正ではないが、平成29年には流通取引慣行ガイドラインも大幅に改正された。


【労働法分野】

・平成30年改正(「働き方改革関連法」。労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法等の一括改正)


また本年(2019年)も、民法、民事執行法、特許法、独禁法などにつき、改正法が成立している。(念のため、以上は主要な法律に限って改正の状況をご紹介したものであり、網羅的なものではない。)


ところで、以上のような最近の法改正について、効率的に情報を収集したい場合、どのようにするとよいだろうか。①主要な法律雑誌(ジュリスト・旬刊商事法務・NBL等)を購読する、②商事法務から出版されている解説書(「一問一答シリーズ」)を読む、③各官庁のホームページをチェックする等がスタンダードな方法と思われるが、ここでは、④「時の法令」という雑誌を読むという方法をご紹介したい。


この「時の法令」という雑誌は、一言で言うと、「立法担当者による改正法の解説記事が、毎号3~4件程度掲載される」という雑誌である。立法担当者が執筆しているため、解説内容の信頼性は高く、この点がこの雑誌の強みになっている。
そしてこの雑誌では、ある国会で成立した主要な法律の解説記事が、当該国会終了後、半年~9ヶ月程度でほぼ全て掲載されるようになっている。このため、この雑誌をチェックしていると、重要な法改正の情報をほぼ網羅することができるのである。
またこの雑誌(のうち解説記事の部分)は、最近、ウエストロー・ジャパンでも読むことができるようになった。ウエストロー・ジャパンで読む場合、最新号だけではなく、平成18年以降の全ての解説記事も読むことができるため、利便性が高い。
この雑誌は、法曹関係者は購読していることが多いが、一般の方には余り知られていないようであるため、ご紹介させて頂いた。何かの参考になれば幸いである。



2019年(令和元年)9月10日
さくら共同法律事務所
弁護士 小野沢 庸