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■弁護士アンビュランス・チェイサーの時代(司法改革と弁護士大増員)

 この記事は、女性起業家第1号として著名なダイヤル・サービス株式会社今野由梨社長が主催されている「原宿サロン」の平成21年6月例会で、私が「弁護士アンビュランス・チェイサーの時代(司法改革と弁護士大増員)」というタイトルでプレゼンテーションをさせていただいた際の講演録です。

1 法曹人口の増加

  司法制度改革が進行中です。そして、その一環として、法曹人口の大増員が行われています。

  平成13年に発表された司法制度改革審議会意見書によれば、司法制度を支える法曹の在り方として、以下のように述べています。



  今後の社会・経済の進展に伴い、法曹に対する需要は、量的に増大するとともに、質的にも一層多様化・高度化していくことが予想される。現在の我が国の法曹を見ると、いずれの面においても、社会の法的需要に十分対応できているとは言い難い状況にあり、種々の制度改革を実りある形で実現する上でも、その直接の担い手となる法曹の質・量を大幅に拡充することは不可欠である。

 法曹人口については、平成16年には現行司法試験合格者数1,500人を達成した上、新たな法曹養成制度の整備状況等を見定めながら、平成22年ころには新司法試験の合格者数を年間3,000人にまで増加させることを目指し、、平成30年頃には法曹人口を5万人とする予定とする。



2 弁護士業務の位置づけ

  また、平成17年の規制改革会議においては、法曹人口問題を規制緩和の1つと認識した上で、弁護士という職業を一般のサービス業と同視し、自由競争原理のもとに置くことによって国民の法的サービスの享受が高まると結論づけています。

  そして、弁護士の広告が解禁されるとともに、日弁連報酬基準規程は廃止され、報酬は当事者間で自由に決めることができることになりました。

  弁護士大増員により資質の低下が懸念されることに関しては、資質は市場でテストされ、資質の低い者は市場で淘汰されることになっています。

3 法曹に対する需要の増減

  他方で、弁護士が処理すべき事件数に関しては、この5年間、統計上、事件数、訴訟件数は増えていないようです。

  裁判官・検察官の顕著な増員もありません。その結果、弁護士だけの大幅増員という結果になっています。

  また、当初想定されていた企業内弁護士としての大量採用などということも報告されていません。

4 勤務弁護士の実態

  その結果、司法研修所を卒業した新人弁護士を法律事務所が採用しきれなくなって、新人弁護士が大変苦労しています。

  以前は、新人弁護士は、司法研修所を卒業すると、先輩の事務所に「居候」して指導してもらいながら給料をもらう、いわゆる「イソ弁」というスタイルで仕事を始めるのが一般でした。

  しかしながら、近年は、「ノキ弁」という、固定給なしで事務所の机(軒先)を借りる独立採算型のスタイルで業務を開始する新人弁護士が増えています。電話、パソコン、コピーなどは自由に使えるが、固定給はないというものです。

  さらには、「ノキ弁」としても法律事務所に就職できない場合は、「タク弁」といって、やむなく自宅を事務所にし、連絡先は携帯電話などという新人弁護士も出現しています。

5 弁護士の利用方法

  弁護士が大増員される中、その資質は市場でテストされることが予定されているわけですから、弁護士という名前だけで弁護士に依頼する時代ではなくなってきたということです。弁護士も玉石混淆です。

  従って、事件依頼をされるときは、例えばホームページにアクセスするなどして、その弁護士の取扱分野、実績、経験等の確認をするべきでしょう。広告活動が自由になり、弁護士も自ら情報発信し、営業活動をせざるを得なくなったので、弁護士も最低限ホームページは開設しているでしょう。ホームページの開設がなく、また開設されていても、取扱分野、実績、経験等の説明がない弁護士は、そのような説明の必要のない著名な大先生であるか、もしくは実績、経験等のない弁護士のどちらかでしょう。

  また、依頼をする前に、複数の弁護士から意見を聞くとか、セカンド・オピニオンを取るとか言ったことも遠慮する必要はないでしょう。

  さらに、報酬に関しては、相見積もりをとることも常識的な方法になってくると思われます。

  できる弁護士を選ぶ基準は、企業の経営と同じです。細かい法律や判例の知識などより、事件の全体像の把握能力、大局観、方向感、これが一番大切です。かつ、これを備えた弁護士の指針に従って、迅速且つ効率的に動いてくれるアソシエイト弁護士その他のスタッフが充実していること、公認会計士、税理士、弁理士等の専門家と緊密に協議できる体制をもっていることなどができる弁護士の条件です。

  私のいるさくら共同法律事務所も、上記条件を満たす事務所であると自負しております。

6 さくら共同法律事務所概要

  最後に私の所属するさくら共同法律事務所(http://www.sakuralaw.gr.jp/)の概要を説明させていただきます。

  パートナー弁護士9名、アソシエイト弁護士20名、事務職員40名であり、月刊誌The Lawyersによれば、日本に所在する法律事務所中31番目の規模です。

  特徴として、日本の法律事務所中31番目の規模ですが、弁護士在職者数が100名を超えるいわゆるビッグローファームとは、一線を画した経営方針をとっています。

  業務の対象を、上場企業の企業法務関連業務に限定することなく、中小企業、個人の依頼事件も幅広く扱っています。そのため、一般民事関連訴訟に関し,不動産関連,借地借家関連,貸金返還,損害賠償請求(交通事故,医療過誤等),離婚,相続などほぼすべての分野においてノウハウを蓄積しており、また、刑事事件の取り扱いも豊富です。

  他方で、会社法、金商法、税法、知財、M&A関連、投資事業、上場支援、大型倒産及び事業再生などの企業法務関連部門の対応のために弁護士各人がそれぞれ専門分野での知識、経験の習得に励んでおり、その結果、上記ビッグローファームに劣らない高水準のリーガルサービスの提供を可能にするとともに、少数精鋭で事件処理を行うために弁護士費用も割安となっています。

  なお、私の取扱分野、実績、経験等は、ここを参照してください。